はとにまめでっぽー

本とかゲームの感想や、日記を綴るよ

映画『君たちはどう生きるか』感想

こんにちは。

今、色んな意味で話題の映画『君たちはどう生きるか』を観に行ってきたので、感想を語ろうと思います。

私はジブリや今作の熱心なファンではありませんので、万が一あなたが誤った考察や事実と異なる表記を発見した時は「わかってねぇなこいつ」と軽く流してもらえれば幸いです。

前もって聞いてた評判

私より先にこの映画を観てきた家族が「すごくいい、意味不明だがそれでもいい」などと、メチャクチャな感想を言っていたので、つい興味を惹かれてしまいました。

先程この映画のことを「色んな意味で話題」と説明しましたが、公開まで一切宣伝を行わないかったこと、何より観客のレビューが⭐︎1か⭐︎5の2極化していることが特に注目を浴びているポイントかと思います。

ざっくり観た感想

というわけで実際に観に行ってみましたが、私の中での本作への評価を⭐︎5つで表現するなら、⭐︎2くらいかなぁ〜という感じでした。

評価が低めな理由は、大きく分けて以下2点です。

①オリジナル作品のタイトルを、バズった別作品から取るな
②この映画で1番表現したかったことがどれかわからない

①オリジナル作品のタイトルを、バズった別作品から取るな

まず、私が勘違いしていた点として、大バズした書籍『君たちはどう生きるか』のアニメ化作品ではありません。

この映画は宮崎駿監督のオリジナル作品です。

コペルくんも出てきませんし、内容もめちゃくちゃファンタジーです。

どうして宮崎駿監督は全くる異なる内容の他作品のタイトルを、この映画のタイトルとして引用したのでしょう?

私は、この作品が宮崎駿監督が書籍『君たちはどう生きるか』を読んで、感じたことを自分なりに表現したものだからではないか思っています。

書籍『君たちはどう生きるか』については、読み手に生き方について問いかけ、考えさせる姿勢が印象的な作品です。

その辺に売ってるビジネス本のように、「こうすれば成功する」「絶対に善い人になれる」というメゾットを記した本ではありません。

宮崎駿監督はこの作品を読んで、自分にとって生きるとはどういうことか考え、その果てに出た結論を、監督が1番得意とする映像作品として著したくなったのではないでしょうか。

じゃあ宮崎駿監督にとって生きるって何でしょう?

私は悪意を孕む世界の一部として、悪意と向き合い、人とぶつかり傷つき和解しながら前に進むことではないかと思います。

悪意ってなんぞや

本作のストーリーを振り返ってみましょう。

今作の主人公・眞人は火事で母親を失い、未だにその死から立ち直れていません。

しかし父親は母親の妹である夏子叔母さんと再婚し、さっさと子供まで作っています。

その義母も、眞人に初めて会うや否や、母親ヅラで馴れ馴れしく話しかけて来ます。

母の実家のお屋敷にいる使用人たちは、老人のくせに子供のような耳障りな声で喋り、勝手に鞄を開けて土産を漁るなど、下品ともとれる行動をします。

 

眞人を取り囲む人々は、眞人の孤独や傷を理解してはくれません。

しかし、眞人が危険な目にあった時、彼らは全員自分のやり方で眞人を守るべく懸命に動いていました。

皆、気難しい眞人をなんとか元気付けて、寄り添いたくて、自分にできる精一杯をやっているのです。

 

眞人がそれを自覚する最大のきっかけになったのは、やはり継母である夏子叔母さんの言葉でしょう。

ある日突然行方不明になってしまった夏子叔母さん。

眞人は夏子叔母さんは父の大事な人だからと、半ば渋々とした気持ちで彼女を探しに行きます。

長い冒険を経て、ついに夏子叔母さんを見つけた眞人。

塔の中の世界で、石に守られながら赤ちゃんを産もうと産屋に横たわる彼女に、眞人は「夏子叔母さん、一緒に帰ろう」と呼びかけます。

しかし、そんな眞人を見た夏子叔母さんは、普段穏やかな態度とは打って変わって、興奮した様子で叫びます。

「あんたなんか大っ嫌い!」

…そう、新しい親子関係に戸惑っていたのは眞人だけではありません。

夏子叔母さんも、連れ子である眞人との向き合い方について、ずっと葛藤していたのでした。

どんな場面でも決して目線を合わせず、最低限の言葉しか交わそうとしない眞人の態度からは、自分が彼に拒絶されているという事実が嫌というほど伝わって来ます。

普通なら自分を嫌っている人となんて仲良くしたくありませんよね。

いっそ眞人を無視したり、お互い正直に憎み合ったりする方が、楽かもしれません。

でも夏子叔母さんはそうしませんでした。

自分の中にある「悪意」を乗り越えて、大人として、母親として、夏子叔母さんはめげずに眞人に歩み寄ろうとしていたのです。

お腹にいる眞人の弟の話をしたり、眞人の母の話をしたのも、眞人に家族と認めてほしかったからだと思います。

しかしそんな努力も虚しく、眞人は決して夏子叔母さんの存在を認めません。

そんな現実が辛くなって、夏子叔母さんは自分を傷つける者がいない、塔の中に逃げ込んだのでしょう。

 

夏子叔母さんが自分と同じ苦しみを抱えていたこと、自分の苦しみは彼女の優しさに甘えた独りよがりだったことに気づいた眞人。

彼女に向かって手を差し伸べ、本心からこう言いました。

「母さん、一緒に帰ろう」

こうした出来事を経て、眞人は思い通りにならない現実を受け入れ、傷つけ合うことがあっても、今自分を大切にしてくれる人たちと生きていくことを決め、塔の中から元の世界に帰りました。

悪意を拒んだ大叔父さん

一方、眞人の母親の大叔父さんは、お屋敷の庭にある塔の中に不思議な世界を作り、その中に閉じこもっていました。

大叔父さんが作った世界は、まるで神話かおとぎ童話のようです。

大叔父さんはその世界の「殿様」として、頂点に君臨しています。

ピンチになっても、大叔父さんをはじめとした眞人の一族は、あの世界ではスーパーパワーを使えます。

悪者であるペリカンやインコが現れた時も、本気を出せばスーパーパワーでなんとかできるのです。

ただし、スーパーパワーを喰らった方は苦しんで死にますが…。

 

こう書くと、塔の中の世界は大叔父さんや眞人にとっては、現実世界より居心地の良い場所だと思いませんか?

 

眞人と大叔父さんは似た人物ながら、対照的に描かれていると思います。

2人とも、賢く、思慮深く、繊細。

しかし、眞人は悪意や傷つくことを受け入れて現実で生き続けることを選んだ一方で、悪意を避けて綺麗な世界に篭った大叔父さんは、最後には自分が持ち込んだインコに自分が作った世界ごと滅ぼされてしまいました。

この2人の対比を見ていると、宮崎駿監督が良しとした生き方は、やっぱり眞人の方なんじゃないかなーと私は思います。

私はどっちかというと大叔父さんタイプなので、そんな生き方してると滅びるとか言われるとちょっとムッとしちゃいますが。

おまけ:眞人の自傷の理由は?

眞人は映画のラストで、自ら石を頭に打ち付けてできた傷跡のことを「悪意によるもの」と言っていました。

つまり眞人は何かしら自分の利益のために、あの傷を負ったということです。

何がしたかったのか、作中で明確な描写はなかったと思いますが、恐らく眞人は仮病で構ってもらおうとするようなメンヘラタイプではないので、自分もしくは現状が嫌になって自傷したのかな?と私は思っています。

生を諦めることをエゴ(悪意)と解釈していいならですけどね…。

②この映画で1番表現したかったことがどれかわからない

先述の考えが正しければ、多分今作のテーマは「生き方」なのでしょう。

ただ、いかんせん塔の中の世界観が独特すぎて、もとより奥深い今作のテーマを、更に理解しづらくするノイズになってしまっている印象でした。

同じくジブリの『千と千尋の神隠し』もかなり不思議な世界が舞台ですが、あちらは世界観の描写と千の成長がしっかりリンクしており、ノイズになるどころか魅力になっていた記憶があります。

私の家族はこの辺をスルーして、映像表現や世界観を楽しめたようですが、私は理屈っぽいのでその辺が気になってしまいました。

墓の主とか、意思を持つ石とか、その辺の専門用語や解説に気を取られて、登場人物たちの心の変化に集中できないんですよね。

「生き方」なんてぶっちゃけ説教くさいテーマの映画をやるなら、ちゃんとどの要素に情報量を割くか考えたほうがいいんじゃないでしょうか。

まとめ

というわけで、長くなりましたが、映画『君たちはどう生きるか』の感想でした。

私にはちょっと合わなかったですが、映像表現は素晴らしいし、刺さる人には刺さる作品のようなので、気になるなら一度見に行ってはいかがでしょうか?

ここまでお読みくださり、ありがとうございました!