はとにまめでっぽー

本とかゲームの感想や、日記を綴るよ

【自己満】V.Vホーキンスさんの魅力を語るだけ【俺得】

先日、私の好きなゲーム「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」の新規プレイヤーさんが、ヴェスパー部隊の第5隊長ことホーキンスさんに魅力を感じているご様子なのを見て、私はこんなことを呟いた。

鉄は熱いうちに打て、ということで、ここに勝手に推しの魅力を語る会を開催することにした。
呟きでは語りの対象を歴代推しと書いたが、ホーキンスさんの魅力を語ってたら文字数が増えてしまったので、今回は彼だけについてまとめることにする。

 

あれこれ語る前に一旦、私にとってこのホーキンスさんがどんなキャラなのか一言で言っておこう。

 

──ずばり、AC6で最初に心から「怖い」と思った敵キャラクターである。

 

怖いキャラに好意を抱くとはどういうこっちゃ? と思う人もいるかもしれない。

悪役が好きってこと? いやいや、ホーキンスさんは敵キャラではあるが悪役ではない。

というわけで、ここからはその理由と合わせて、ホーキンスさんに出会うまでの経緯を振り返っていく。

ネタバレもりもりなので、未クリアの人は注意されたし。

出会いまでの経緯

まずこの「ARMORED CORE VI(通称:AC6)」という作品に手を出したきっかけとしては、エルデンリングをプレイしていた当時、TLに流れるフロムゲーマーたちの熱狂的な声と怒涛のFA(幻覚)に惹かれたことだった。

ツンデレが好きなので、プレイ前はイグアスという主人公のライバルである不良キャラ辺りにハマるかな〜と予想していたのが、まさか1ミッションしか登場しないおじさんにここまで狂わされることになるとは。

ロボットコンテンツに触れるのは初めてだったので、プレイ当初はちゃんと操作できるだろうかと大変緊張したが、幸いなことにAC6は普通のアクションゲームと同じノリでプレイできた。

いや、正確には同じノリではない。なんか敵も味方も皆主人公(通称:独立傭兵レイブン)を褒めちぎってくれるのだ。
序盤なんかボタン1個押して自動照準のミサイルを撃つだけで「なんだこいつは!?」と大騒ぎしてくれる。

それまで狭間の地でキャラからもシステムからも「下手くそ」と罵られ続けていた私は、突然接待のように心地よいおだての言葉を浴びた結果、まんまと調子に乗った。
広告に流れてくるなろう系主人公に対する軽蔑は一体どこに行ったのか。
「我こそは独立傭兵レイブン様じゃい」と言わんばかりに暴れた。

この時点では私にとってAC6は、非常に良質なロボットアクションゲームでしかなかった。

 

さて、ホーキンスさんとの出会いと彼の魅力を語るにあたって外せないのが、ホーキンスさんと同じくヴェスパー部隊に所属し、その第8隊長を務めるペイター君という青年である。

ちなみにさっきから出てくるこの「ヴェスパー部隊」というのは、ゲーム内に登場する強大な勢力の1つであるアーキバス・コーポレーションという巨大企業の専属AC(=ロボット)部隊を指す。

部隊員は全8名、基本的にオフィスワークとACパイロット業務の両分野で優れた人材で構成されたエリート集団である。

 

前述のとおり、ストーリ上1ミッションしか出番のないホーキンスさんに対して、ペイター君はゲーム序盤からアーキバス社発行の依頼におけるブリーフィング担当者として終盤まで何度もプレイヤーと接触するキャラクターだ。
なので、一般的なAC6プレイヤーには彼の方が印象に残るキャラとして認識されているだろう。

彼と同時期に登場する別企業のブリーフィング担当者は声がでかくて威圧的なのに対して、ペイター君はとても仕事ができそうな喋り方をしており、いかにも礼儀正しい好青年という印象を受ける。
しかしストーリーを進める中で色々彼のことがわかってくると、こいつがなかなかのトンデモ野郎であることが判明するのだ(逆に声がでかい人の方は、実はかなり良心的な人だとわかる)。

ストーリー中盤まではアーキバス社と友好的な関係を築いていた主人公だが、ある日ルビコン解放前線というアーキバス社の対立勢力の1つから、同社の輜重部門責任者とその補佐官をまとめて撃破しろという依頼を受ける。

この2名こそがホーキンスさん(輜重部門責任者)とペイター君(補佐官)であり、プレイヤーはここで初めてホーキンスさんという人物と接触する。

それまでヴェスパー部隊の第5隊長ということ以外は大した情報がなかった彼について、具体的な立場と職務内容、そして彼がペイター君の上官であることが明かされるのだ。

この時「あのペイター君の上司を務めている人物が存在するのか!?」という事実は私に大きな衝撃を与えた。

あの自由人を制御するのはどう考えても並大抵のことではない。
きっと彼に振り回されている苦労人か、おっかない人なのだろう……。

それが当時の私の予想するホーキンスさんの人物像だった。

 

というわけで、早速任務に出撃する。
主人公は嘘でおびき出された2人を奇襲する手筈になっていた。

味方キャラには物陰で待つように言われていたのだが、その物陰が具体的にどこだかわからなかった私は普通に部屋のど真ん中に突っ立って2人を待っていた。

しばし待つとステージにACが2機やってきた。味方が待ってるはずの場所で普通に知らん奴が棒立ちしてるのを見て、ペイター君が驚愕の声を上げる。

あ、やべ、と思った。

でもいいや、俺は天下の独立傭兵レイブンだし。
ちょっとミサイル撃てばコイツらもいつものようにビビリ散らかすだろう。

そう舐めてかかっていたところ。

ホーキンスさん:
「どうやら敵さんらしいね ペイター君 迎撃始め!」

 

えっ?

 

おじさん!?!?!?

 

初めて聞いたホーキンスさんの声は、AC世界では珍しい普通のおじさんっぽいものだった。

 

驚きはしたが、すぐに気持ちを切り替えてもう1回ミサイルとバズーカをぶっ放す。こんだけやれば、大体の敵はレイブン様の登場にきゃあきゃあと逃げ惑うのである。

しかしどういうわけか、ここまでの敵と違ってこの2人には脳死攻撃がほとんど命中しない。

だのに私の体力はみるみるうちに減っている。

あれ、あれ、と思っているうちに、とうとう体力の底が見え始めた。

ホーキンスさん:
「さて… 詰めといこうか ペイター君」

ペイター君:
「はっ 承知しました」

 

…これ、もしかしなくてもピンチでは??

 

必死の交戦も空しく私はあっさりと敗北し、卑劣な襲撃者を無事返り討ちにしたホーキンスさんとペイター君はお喋りをし始めた。

 

画面が真っ暗なリトライ画面に切り替わる。

 

私は若干混乱していた。
今のミッションは情報が多すぎる。

 

──ホーキンスさんが、AC6で稀に見る常識のありそうなおじさんだった。

──ペイター君が、ちゃんと後輩をしていた。

 

AC6に登場するキャラは大体どこかがぶっ飛んでいるので、正気を保ったおじさんに若くクレイジーなペイター君の上官が務まるとは到底信じられなかった。

多分このホーキンスとかいう人は、めちゃくちゃ二面性があるキャラなのだ──。

一旦そう結論づけて再戦ボタンを押した。

前回の敗北は奇襲失敗によるところが大きいと考え、今度はちゃんと物陰に隠れて、2人の不意を突くことにした。彼らは部屋に入ってくると、AC越しに互いの顔を見合わせて話し始める。

ペイター君:
「第2隊長閣下から緊急招集とは 何事でしょうか?」

相変わらずイケボのペイター君。
さてホーキンスさんは一体どんな風に返すのか…!?

ホーキンスさん:
「スネイルにはよくあることだよ ペイター君
 人を呼びつけるのが好きなんだろうね」

 

!?!?!?

 

まさかのほわほわおじさん!?!?!?!?

 

ペイター君:
「第5隊長殿 聞かれでもしたら面倒ですよ」

 

ペイター君がちゃんと後輩してる!?!?!?!?!?

 

なんと戦闘スイッチがオンになる前のホーキンスさんは、現実の職場にいそうな気さくで優しいおじさん上司そのものであった。

そして戦闘中に限らず、平時であってもペイター君はちゃんと後輩をしていた。

びっくりしっぱなしではあったが、この辺で奇襲を仕掛けようと、どっちがどっちだかよくわかんないままバズーカを撃つ。
飛んでった弾はペイター君に当たり、彼は突然の衝撃に呻いた。
おっしゃ、伏撃成功! とガッツポーズをしたのもつかの間。

ホーキンスさん:
「伏兵か!? ペイター君 被害状況は!」

ペイター君:
「損傷軽微 戦闘に支障ありません!」

ホーキンスさん:
「よし 迎撃始め!」

 

あれ、伏撃成功したからってびびるわけじゃないのか?

 

そう思ったが、地形的にマウントをとれたことは大きな有利。

先ほどよりも相手にミサイルが命中しているのを確認しつつ、今回は攻撃を避けることも意識して先頭に臨む。

ペイター君:
「独立傭兵レイブン 直接やりあうことになるとは…」

おっ、なんか喋り始めたぞ。

ホーキンスさん:
「もうひとりは… 帥叔フラットウェル(注:このミッションにおける味方のおっさん)
 解放前線の重鎮までお出ましとは ちょっと頑張ろうか ペイター君」

ペイター君:
「はっ 望むところであります」

 

え、この人たちなんでこんな落ち着いてんの?

私、レイブン様ですよ。天下の…。

なのに「ちょっと」頑張る程度で、片付けられちゃう相手なんですか?

えっ?

…え?

 

この瞬間、私はこのおじさんを「怖い」と感じている自分に気がついた。

うまく説明できないが、それは敵キャラとしてのステータスの強さへの恐怖ではなかった。

対人的な恐怖だった。

滑り出しはよかったが、途中で地形的な有利を失ったせいか、次第にまたこちらのミサイルは当たらなくなっていった。
しかし2人の攻撃はほとんど私に命中している。ずるい。

偉そうな態度の割に早々にやられて退場した味方のおっさんを罵りながら、残りの体力も幾ばくかというところで、ようやくペイター君を撃破する。

ペイター君:
「機体が持たない…! 第5隊長殿 申し訳なく……!」

ペイター君がちゃんと後輩している……!!!!!!

ホーキンスさん:
「ペイター君!
 …すまない あとは私がやる」

 

優しい人だ…!!!!!

 

こんな優しいのにACも強いの!?!?!?

 

その後、若きパイロットを葬った卑劣な奇襲者は、あえなくホーキンスさんに成敗された。

繰り返す敗北、深まっていく解釈

このミッション「ヴェスパー部隊伏撃」は、ルビコプター、スッラを墜として調子に乗っていた私に再び分をわきまえさせた。

このエリート2人組に勝てるのか、という絶望感は今でも鮮烈に記憶に焼き付いている。

しかし、どんなに勝ち筋が見えない戦いだとしても、ストーリーを進めるためには彼らに勝たなくてはならない。

何度も挑戦を繰り返すうちにだんだん彼らの会話を聞く余裕が生まれ、次第にホーキンスさんの人物像が頭の中でなんとなく組みあがっていった。

 

ホーキンスさんは平時はおっとりしているが、奇襲を仕掛けられば素早く状況を把握して反撃に切り替える。
ちなみにプレイヤーが何もせずにいると、ホーキンスさんの方からこちらの存在に気づく。
鋭い観察眼と臨機応変な対応力を持ち合わせた人物だ。

戦闘中の彼は戦況の優劣に関わらず終始どっしりと落ち着いており、その態度からは今回の奇襲が彼にとってこれまでの人生で潜り抜けた数々の修羅場に比べれば他愛無い、少々面倒なトラブルの1つでしかないことが読み取れる。
なおゲーム内にそれを明示するテキストはないのであくまで上記は私の推測でしかないものの、実際に彼がそれ相応の実力の持ち主であることは身をもって体験できる。
ゲームっていいな〜!

そして彼はアーキバス社という碌な倫理観を持ち合わせない企業のACパイロットとして長く前線で活躍し続けながらも、撃破されたペイター君のことを心から悔やんだり、技術の発展に伴う犠牲に心を痛めたりと、良心と強さを両立しているのがまた凄い。
あの殺伐とした世界では、なかなかの精神力がないとこうは在れないのではなかろうか。

その一方で殺すべき敵は躊躇いなく殺せるし、前述のとおり自分たちをしょっちゅう呼びつける性格の悪い上司に対しては陰で文句を言っていたりする(これまた優しそうな口調でさらっと毒を吐くので大変良い)ので、優しい人ではあるのだが決して聖人君子ではない。

そんな地に足のついた人間性と確固たる実力を併せ持ったおじさんならば、あのペイター君が素直に言うことを聞くのもなんとなく納得できる。
その上司力もまた彼の大きな魅力の1つに違いない。

何回も何回も様々な状況での負けを重ねる度、脳内でそんな考えが育っていった。

やっとこさ勝利、そして訪れる飢え

こうして数えきれないほどの試行を経て、やっとのことでようやくこのミッションをクリアした時の私の気持ちをなんと表現すればいいだろうか。

嬉しいよりも、本当にこの2人をまとめて撃破できたのかという驚きと、この世界ではもう二度と彼らと会うことはできないのかという寂しさの方が大きかった気がする。

それまで数日間に渡る敗北の連続で少し疲れていたのと、ちょうどその時の時刻が風呂に入るのに良い時間だったので、私は無事にこの難関を越えられたことへの安堵を胸に一旦ゲームを閉じた。

 

しかしどうしたことだろう。

ゲームを閉じた私の頭は、何故かいまだにホーキンスさんの声を反芻し続けている。

 

ふと、エルデンリングの海外ファンがゲーム内のキャラになりきったASMRを投稿していたことを思い出した私は、気づけばYouTubeの検索欄に「AC6 ASMR」と打ち込んでいた。

検索結果にホーキンスさんの名前は無かった。

胸中の僅かな期待が動揺に変わる。

 

私はどうにかして彼の褒め褒めASMRをこの世に召喚する方法はないかと頭を悩ませた。

 

そんな方法は思いつかなかった(一瞬AIという方法が頭をよぎったが、こんなに素晴らしい演技を見せてくれた声優さんへの冒涜になる気がして手を出さなかった)。

仕方ないのでホーキンスさんを演じた飛田さんの出演作品を調べた結果、この人のキャラ毎の声の演じ分けが凄すぎて、恐らく『ホーキンスさんの声』はホーキンスさんからしか聞けないのだと悟った。

この渇きが金輪際どうにもならないという事実に、私は布団の上でもんどりうった。

──ホーキンスさん、貴方は一体どんな修羅場を潜り抜けてきたんですか…?

──ペイター君のこと、どういう風にマネジメントしてるんですか…?

 

──なにより、何故私は架空のおじさんのことをこんなにまで考えているんですか…?

総括

そんなわけですっかりホーキンスさんに狂わされた私の生活は、それまでと色々なことが変わってしまった。

ずっと推しを持たずグッズも買わない淡々系オタクだったのが、更なる供給欲しさに長年ROM専だったのを辞めてとうとう自家発電、つまり二次創作に手を出し、公式から発売されたホーキンスさんのエンブレムがプリントされたTシャツも買ってしまった。

ここまであからさまなキャラグッズを買うのが初めてだったので購入時は少し葛藤したが、綿100%で生地もしっかりしており、普通に着心地が良いので重宝している。

二次創作も自分の頭の中にしか存在しないものを現実に出力する過程が大変ながらも楽しいし、それを他の人とも共有できるのがとても新鮮だ。

AC6を起動すると必ず真っ先に「ヴェスパー部隊伏撃」をリプレイし、ホーキンスさんとペイター君にボコボコにされては「推しが強くて最高~」と叫ぶのがお決まりになっている。

全エンディングを制覇した今振り返ると不思議なのが、彼ら並みに強い敵は他に何人もいたはずなのだ。
勝利までに要した時間でいってもホーキンスさんとペイター君は全キャラ中4番目くらいのはずなのだが、どうしてかこのミッションは一際強烈に私の記憶の中で存在感を放っている。

あのミッションを通じて、当初無機質だった私の中のヴェスパー部隊への印象は大きく変化した。
彼らは戦闘部隊であると同時に会社員であり、本編で描かれないところで彼らなりの人間関係を繰り広げているのだ。

そしてそれはヴェスパー部隊だけに限った話ではない。
この世界のキャラクター達全員に、ゲーム内では描かれなかった日常がある。

そんなふうに思ったら、一気に彼らに対する愛着が湧くようになった。
数年ぶりに味わう感覚だった。

今思えばホーキンスさんを「怖い」と感じたあの瞬間、私の心は久しぶりにゲームの世界に入り込んだのかもしれない。

 

…しかし、ここまで散々語っておいてなんなのだが、ここまで挙げた彼のどんな魅力も先程の「何故私は架空のおじさんのことをこんなにまで考えているのか」という命題の真にはなりえない気がするのだ。

というのも、ASMRなんか求める時点で、どう考えても私はホーキンスさんにリビドーを感じている。
これまでの人生で一度もおじさん推しになったことはないにも関わらず。

 

何故だ?

 

普段のほわほわした態度と戦闘時のギャップがかっこいいから?

飛田さんの演技がすごいから?

ペイター君との関係性に味があるから?

 

わからない。もしかしたら全部だろうか?

 

──とりあえず人生は楽しくなったので、OKです。

今更「Mouthwashing」の感想を語る ※ネタバレあり

このブログは元々ゲームや小説の感想置き場として開設したのに、最近の私ときたら面倒くさがってしょうもない近況ばかり書こうとしている。

そんなわけで今回は己を叱咤して、長らく下書きのままで放置していたこの「Mouthwashing」の感想記事を書き上げて公開することにした。

どうも情緒的な表現が苦手な私にとって、感想を書くのはかなり骨の折れる作業だが、頑張るのでなんかの偶然でここに辿り着いた人は、良かったら読んでいってほしい。

「Mouthwashing!!」

store.steampowered.com

今でこそ流行り尽くした感のあるこのタイトルだが、私は幸運なことに多くの実況者がこれをネタにし出す前に、この作品をプレイすることができた。今振り返るとなんと幸運だったのかと思う。

以下、ネタバレ含めて語っていくので未プレイの人は注意されたし!

操作・移動が快適だ!!

このゲームの一番の強みはストーリーであるのは誰も文句ないと思うが、ゲームである以上、設計が快適でないとその良さが削がれてしまう恐れがある。

実際に私はこれまで数々のインディーズゲームで画面酔いし、迷子になり、ストレスで脳を焼かれてきた。

「Mouthwashing」はその辺の気遣いについては非常に細やかだ。

まず操作面ではカメラ感度を調整できるし、頭部の揺れもオンオフできる。反転設定もできるから古の日本ゲームプレイヤーも安心だ。

ゲーム内の造りとしても、マップが広すぎないし(最高!!)、ストーリーに必要ない場所は立ち入らせない。また次に行くべき地点に繋がる道はライトアップされていたり、ライトが点滅していたりするので、迷子になりづらい。

こう書くと移動が単調になりそうだが、イベント時のみ通行可になるマップも多く、「またここかよ~」みたいなマンネリ化は感じなかった。

あと、ローポリは怖さを掻き立てるだけじゃなく、情報量が整理されるので脳に余計な混乱をもたらさない。

ローポリのホラーゲームが数ある中で「Mouthwashing」がこれだけの知名度を得たのは、プレイヤーがあの悲壮なストーリーに集中できるよう造り手が施した、数々の小さな工夫がベースにあると思う。

ストーリーもね…

これについては良すぎて、私の語彙力ではあまり上手に語れない気がするが、やるだけやってみる。

 

個人的には後味の悪さは残しつつ、物語としては一貫してジミーの自己満足が周囲を滅ぼすという形を貫いていて、すごくきれいに終わったと思う。

当初は不安でしかなかったタルパ号メンバーが、終わるころには1名除いて全員好きになっている。

ムードメーカーだったダイスケをスウォンジーさんが介錯するシーンでは、辛すぎてしばらく言葉が出なかった。ジミーはずっと『良い船長』でいるための行動しかできなかった訳だが、あそこで「苦痛を長引かせないために親しい人を殺す」という選択をするのはどれほどの覚悟がいることだろうか。

格差社会でどん底から抜け出すことの難しさ

時折、タルパ号の船員を全員クズだのカスだの言う奴を見かけるが、そいつは悪口とジョークを履き違えた残念なオタク君だと私は断言する。あのディストピア世界の中で、元々の生まれが良くない人間がどん底から這い上がるのにそれほどの努力が要るか、少し考えてみてほしい。

このブログを読める、つまりインターネットとそれに繋がる端末を持っている人間の大半は、真人間として世の中に立っているだろう。しかし、そんな現状は99%が運によるものに過ぎない。健康な心身、努力ができる環境、正しい努力の方向を知る機会、努力に投資する時間もしくは資金、その努力を認めてくれる人々に恵まれていないと、『ちゃんとした経歴』を積むのは難しいだろう。

逆にそれらがどれか一つでも欠けると、カーリーの言う『ハシゴを登り切る』までに多大な精神力・体力・時間を要することになる。そして、タルパ号の乗員たちは皆持たざる側だ。走っても走ってもゴールが小さいままでは、酒やらなんやらに逃げずにいることは難しい。

だが彼らのほとんどは、自分たちの持つ資質と資産の少なさを自覚しながらも、どうしようもない状況の中でも自分なりに出来ることを精一杯やっていた。これを「カス」と嘲笑するタイプのジョークは、個人的に好きではない。

小心者としてのジミーへの共感

ジミーだけはどん底に居続けることに耐えられず、周囲に当たり散らして理想に逃避しまったので、結局状況は止めようがないところまで悪くなってしまった。

彼にはエリートに見えるカーリーも、実際には苦労してハシゴを登っていたわけだが、他人の葛藤を認識する余裕はジミーにはどう見てもない。彼には健康な心身の、心の方が欠けていたと思う。所謂、小心者というやつだ。

私も彼と同類なので、彼が自分の器に合わない役職をどうにかやろうとする姿の不格好さと滑稽さ、最終的に他責思考になって喚き散らす過程には、多少なりとも共感するところがあった。ジミーはヴィランではなく、全部の選択肢で失敗した私たちの姿なのだと思う。

私の意見だが、小心者には小心者なりの向き不向きがあり、リーダーの役職は勿論不向きに入る。ジミーはその肩書が持つ栄誉に目がくらんで現実を正しく捉えられなかったが、もし彼が何らかの形でカーリーのサポート役に徹することに納得できていたら、彼の心は少し楽になったんじゃないかと思うところがある。

(我ながら相当な希望的観測だとは思うが、もしそうなっていたら、レイプが本当に許されざる文句なしの論外の行為だと認識できる程度の精神的余裕を、彼が持てた可能性も0ではなかったんじゃなかろうか…。)

カーリー船長に理性はあったのか?

我らがカーリー船長が、事故後は一切喋れない点は物語にいい味を出していると思う。

衝突後のカーリーのセリフは全部ジミーが自分に都合がいいセリフをアテレコしてるだけで、彼が実際に出来る自己表現は痛みに対するうめき声や涙、そして瞼がなくなってしまったが故にひたすら向けられる視線だけである。

カーリーはジミーの行いを非難あるいは憐れみを持って見つめているのだろうか。あるいはもう彼の正気は失われていて、上記は生理的な反応でしかないのかもしれない。

個人的には彼には理性と意識があり、ジミーに対しては責めるというより「どうしてこんなことを」とずっと訴えかけていたんじゃないかと思っている。

全身の皮膚を失ったカーリーは果たしてコールドスリープに耐えられるだろうか。個人的には耐えられないと思う。

カーリーは本当に作中ダントツで苦痛を背負わされたキャラである。それ故に、彼はこの作品の象徴たりえるのかもしれない。

アーニャの性被害

「どうして寝室には鍵をかけていないのか」という彼女の問いは、SOSだった。この話題で、しかも被害者側の立場で、いきなり核心を告げるのを躊躇う気持ちがあるのは当然だ。

アーニャとジミーが良い仲だった説は、個人的には全くないと思っている。

いくら密室空間といえど、ダイスケやカーリーといったジミーの他にも年代が近く性格が良い男も他にいる状況で、あんな接し方をしてくる奴に好意が湧くわけがない。アーニャは気弱だが、意志はしっかり持っている人間である。また他者の目がある状況では、DV的な洗脳じみた好意も発生しづらい気がする。

ジミーは正式な看護師の資格を持たず、気弱なアーニャのことを格下の相手として半ばモノ扱いしており、それ故に八つ当たり的に暴行に及んだのだと思う。もしアーニャが大々的に抗議の声を上げたら「俺があんなブスに興奮するわけない」とか宣うタイプに違いない。

なお、散々ここまで偉そうに書きながらどうしようもないのだが、私もプレイしている時は「カーリーは良い船長だ」という固定観念に流されて、彼のアーニャへの対応がおざなりなのを見てみぬふりしてしまった。

クリア後、自分のプレイを振り返ってこのことに気付き、愕然とした。

自分はセカンドレイプなんかするわけないと思っていたのに、実際のところ遠回しに加害者に加担していたことを突き付けられたのだから。

しんどいよ~

クリア後、私は恐怖で上手く寝付けなかった。

だだっ広い真空の宇宙。その中をあの小さなタルパ号はずっと漂流し続けるのだろうか。既に終わった悲劇の痕跡を載せて。

ポニー運送は荷物が紛失した際の保証がない代わりに代金が安い。既に倒産した会社が金をかけて彼らを探すことは、決してないということだ。

彼らがどんな思いで命を終えて、あそこで何があったのか、永遠に誰かに知られることはないのかもしれない。プレイ中にひしひしと感じていた、どこにも逃げ場がない中でじわじわと死が迫ってくる感覚は生々しかった。

当時エルデンリングを並行で遊んでいた私は思った。

──治安が最悪でも広大な大地と空がある狭間の地が恋しいよ~!…と。

おわりに

というわけで流行からかなり時間が経ってしまったが、「Mouthwashing」の感想をある程度形に出来た。正直ほっとしている。

書きながら「結局このゲームは何だったのか」という問いが私の中に浮かんだが、「誰にも知られることのないある悲劇の記録」という形容が今のところ一番しっくり来ている。

どん底で藻掻いて、報われずに死んでいった人たちがいた。架空の物語とわかっていても、私はそれを胸に刻んでいる。

 

原因不明の肌荒れを1年かけて鎮圧した話

皆様は「酒さ」という皮膚疾患をご存じだろうか?

この間テレビで紹介されているのを見たので、もしかしたら「知っている」という人もちらほらいるのかもしれない。

この病気は新しく発見されたものでまだ情報が少なく、一度発症してしまうと治療までにそこそこ苦労する。私も何度インターネットやyoutubeに縋って、役に立たない情報の多さにブチギレたかわからない。

というわけで、自分なりの対処法やら発症~寛解までの足跡やらを記録してみることにした。なお私の場合、酒さに加えてアレルギー反応も混ざっていたので解決までの道のりが余計にややこしかった。同じように困っている方の一助になれば幸い。

というわけで、目次↓

この記事の医療に対するスタンス

この記事は医療関係者じゃない素人が、個人的な闘病記として書いたものです。
あくまで参考程度に捉えてください。

スキンケアで解決しない肌の悩みがあるなら、1度は皮膚科を受診してみよう。

そして、自分の中で「あれ?」と思うことがあったら積極的にお医者さんに質問してみよう。誠実なお医者さんなら、あなたの質問に答えを返すか、一緒に治療方針を検討してくれるはずだ。

もしそれでもお医者さんが真面目に質問に答えてくれない、苛立ち始める、こちらの不安をガン無視するなど不誠実な対応を取ってくる場合は、もう別の病院に行こう。私はその他の持病で長年通院しているが、話が通じない医者に当たった時にドクターショッピングするのは全然アリ派だと思っている。

PR記事じゃないよ!

この記事は私が趣味で勝手に書いてるものでPRではない。記事内のリンクも適当に検索したものを貼ってるだけで、この記事の執筆にお金は1円も絡んでないので安心されたし。

酒さとは何ぞや

簡単に言うと、顔の一部が赤く腫れて毛穴が開き、当該箇所がピリピリチクチク痛くなったりする病気。ニキビのようでニキビでないブツブツが出たりもする。

詳しい原因は不明だが、肌に雑菌が増えてこのような症状になるのではとのこと。「酒さ」という病名だが、必ずしも酒が発症に関係しているわけではない。

製薬会社とかがその辺をまとめているので、詳しくはそちらを参照されたし。

www.msdmanuals.com

www.maruho.co.jp

治療薬としては保険適用の「ロゼックスゲル」、保険外の「アゼライン酸」含有クリームなどがある。原因を特定して身の回りから排除することも重要だ。

だがこの病気はそこまで漕ぎつけるのが非常に厄介である。理由は以下の通り。

  • 他の皮膚疾患と似た症状が多く、皮膚科でも病名の特定が難しい
  • 発症要因が人それぞれ&多岐に渡りすぎて、原因の特定が難しい
他の皮膚疾患と似た症状が多く、病名の特定が難しい

これ。肌にテカった赤いブツブツが出たら、ニキビだと勘違いする人も多いだろう。あるいは合わない化粧品を使って、かぶれているのかもと思われる方もいるかもしれない。

先述の通り、酒さは比較的近年登場した病気である。そのため、皮膚科医でも知識を持ち合わせておらず、上記のような似た症状の皮膚疾患に誤診されることがままある。

酒さにはステロイドは効かない。善良な患者が医者の誤診を信じて結果、事態がこじれる場合がある。私がまさにそうだった。

また、よく酒さと混同される皮膚疾患に「酒さ様皮膚炎」というのがあるが、これはステロイドの塗布が原因で発症するものだそうで、まったく別の病気である。当然、治療法も異なる。ネット情報はこの辺がごっちゃになっているものも多く、もう少し情報発信に責任を持ってほしいと思う。

発症要因が人それぞれ&多岐に渡りすぎて、原因の特定が難しい

どうにか自分の肌の異常が酒さによるものだとわかっても、その先にもまだ困難が立ちはだかっている場合もある。

先述の通り、この病気はかつて酒が原因で発症するものだと思われていた。確かに酒は酒さの発症要因の1つなのだが、実際のところ原因は多岐にわたる。それがまたこの病気を厄介なものにしている要因である。

じゃあ何が原因で発症するのかって?それは人によるのだが、まず暑いと発症する可能性がある。寒くても発症する可能性がある。強い日差しを浴びたから発症する可能性もある。辛いものを食べたから発症する可能性もある。人間関係のストレスで発症する可能性もある。また先述の通り、アルコールのせいで発症する可能性もある。それからそれから…。

なんでもありじゃん!と思った人、その通りである。

ちなみに、私は「日差し」と「暑さ」と「乾燥」で症状が出るタイプの人だ。

酒さだとわかったら、上記の中から自分がどのパターンに該当するのか特定する必要がある。早い段階ではっきり判明してくれると大変ありがたいのだが、必ずしもそうならない場合もある。

どうだろう、この病気の手強さが少しは伝わっただろうか?

私の酒さと現在の対処について

先述の通り、私の酒さは「日差し」と「暑さ」と「乾燥」で悪化する。その他、顔をゴシゴシこすったりしても肌荒れする。

また元来の敏感肌のせいで、合わない化粧品を使っても悪化する。大抵の日焼け止めもそこに含まれるので、日差しに弱いのにUVケアが難しいのも厄介。

これは酒さではないが、アレルギー体質でもあるので「動物の毛」や「ハウスダスト」が多い場所にいると、今度は蕁麻疹が出る。

というわけで、現在は自己流で以下の対処を編み出し、幸いなことに症状が落ち着いている。酒さは人によって原因が全然違うので、これが他の酒さ患者の人に通用する保証はないが、もしこの問題の出口が見つからず悩んでいる人がいたら参考にしてみてほしい。

  • 日差し対策
    • 日差しが強い日は長時間外を歩かない
    • 帽子、マスク、サングラスなど物理で紫外線を防ぐ
    • 万が一、日差しで肌が荒れた場合は、
      下記のスキンケアをしてぐっすり眠るのを最低3日継続する
      (これで大抵持ち直せる)
    • 日焼け止めのかわりに、
      SPFがついてる化粧下地やパウダーでUV対策する
  • スキンケア
    • 国産のパラベン&香料フリーの製品を使う
    •  洗顔後にミノンの薬用アクネケア化粧水&乳液を塗布
      • 冬は更にミノンの保湿クリームも追加
    • 洗顔は朝は水だけ、夜はカウブランドの泡洗顔を使用
      すすぎ時は摩擦を防ぐため、ぬるま湯&水勢弱めのシャワーを使用
    • 外に出ない日は、石鹸で落とせる下地&パウダーで肌を保護
    • 化粧する時は使い捨てスポンジを使う
    • 化粧落としはカウブランドのクレンジングミルクを使用
  • アレルギー対策
    • 常にかゆみ止めを飲む(ペットがアレルゲンのため)
  • その他
    • ビタミンCのサプリを飲む
    • よく寝る
    • ストレス源とは可能な範囲で距離を取る
    • 数日使ってもチクチクするものは肌への塗布をやめる
各アイテムの公式紹介ページリンク(クリックしても私には1円も入りません)

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乾燥さん 下地+パウダーセット(シカグリーン)|【公式】BCLブランドサイト|BCL BRAND SITE

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発症

発症は2023年の春。突然肌が真っ赤に晴れ上がり、髪の毛が一本でも顔に垂れようものなら発狂しそうなほど痒いという状態に陥っていた。

それまでは敏感肌ではあったものの、よほど肌に合わないものを塗ったりしなければ肌が荒れたりすることはなかった。それが突如として、それまで普通に使えていた化粧水、乳液しか塗っていないのに、顔がパンパンに腫れて痒い。

今思えば、当時は新卒として一生勤めるつもりで入った会社を辞め、人生初の転職に苦戦し、安くて刺激が強い化粧水を「イテェな~」と思いながら使っていた。こうした心身へのストレスが重なった結果、コップの水が溢れるように発症したのだろう。

初受診→誤診

近所のおじいちゃんがやっている皮膚科を受診。おじいちゃんは呂律が回っておらず、診断名ははっきり聞き取れなかったのだが、「この症状は年齢と共に現れ、自然に消えるもの」というようなことを言われ、ステロイドを処方された。

早速ステロイドを塗ったところ、顔が燃え上がるように熱くなり、痒みが加速。ステロイドの刺激と、塗布時に顔を摩擦したのが良くなかったのだと思われる。慌てて水で洗い流すと、痒みが落ち着いてすっきりする。

2件目の皮膚科受診→誤診

ステロイドはこの症状にあってないのではないか、と考えて別の皮膚科を受診。

ここでようやく「酒さ」という病名が候補に挙がるが、医者が頑なに「私は絶対に酒さじゃなくて、かぶれだと思いますけどね」と繰り返すので、ステロイドが含まれないかぶれ用の薬を出してもらった。

またこの時参考までに酒さの症状をまとめたパンフレットを貰い、家で読み返して「…これ、酒さじゃね?」と思ったが、とりあえず処方された塗り薬を使う。1週間くらい頑張って塗ってみたが、顔がベタベタするのが不快すぎて眠りながら無意識に顔を搔きむしってしまうし、症状も一向に改善しなかったため、使用を中止。

3件目の皮膚科受診→ようやく酒さと診断

この辺からうんざりした気持ちで、実家近くの皮膚科を受診。ここまでの経緯を話したところ、「それじゃあ酒さかもね」とようやく診断が下りる。

ロゼックスゲルと痒み止め(飲み薬)を処方してもらったが、最初は顔が荒れすぎていたせいか、ロゼックスゲルを塗ると少し痛みがあった。相談して、アズノール軟膏という青い塗り薬を代わりに出してもらう。こちらも不快なベタベタ感はあったが、顔の腫れには多少効果があった。

腫れが落ち着いたタイミングでもう一度ロゼックスゲルを塗ってみたところ、今度は痛みがない。そのまま使い続け、当初は茹蛸のような顔だったのが、平常時より少し腫れてるくらいのレベルまで改善した。

ただ、痒みについては完全に改善しなかったのと(今思えばこれは酒さじゃなくてアレルギー反応だったから)、毎度診察まで3時間前後待つのが嫌で、通院を中断。

今振り返れば、アレルギーの併発を見抜けなかっただけで、ここの病院が一番まともだったかも。

4件目の皮膚科受診→怒涛のレーザー治療営業

痒みを完全に解消したかったので、ネットで酒さに強いと評判の都会の病院を受診。googleマップの評価も☆4だから、きっと安心だ!

医者にこれまでの経緯と痒みをどうにかしたい旨を伝えたが、とにかく「自費でレーザー治療をすれば顔の赤みが取れる」ということしか言われない。個人的には痒みに比べれば顔の赤みなんてどうでもよかったので断り、前回の病院と同じく痒み止めの薬と、ヘパリン類似物質を処方される。

ヘパリン類似物質は割と良かったが、やっぱり元通りというまでの改善には繋がらなかった。

その後1か月くらい通ったが、毎回自費でのレーザー治療を進められ、時には勝手に予約を入れられる(断った)。

最終的に「赤みはどうでもいいんで、痒みだけでも完治させたいんですけど」と伝えたところ「うーん、完治は無理だねぇ」と断言され、であればここに通う意味はないと判断し、通院を中断。

後から調べたら、そこは白い肌が欲しい女性たちに格安でレーザー治療をしてくれるという点で評判が良い病院とのことだった。酒さの治療も、要するにレーザー治療ということらしい。

この時点で4件の専門機関を受診しているにも関わらず、全く事態解決の糸口が見えないことにかなり疲弊していた。

暗中模索の日々

医者への信頼を完全に失い、しばらく迷走する。

色んなスキンケアを試し、酒さ関係なく普通にかぶれて肌がボコボコになったこともあった。最終的にすべてが嫌になり、一時期保湿を避けたりもした。肌荒れに悩む人の中には、同じような行動に走る人は多くいるようだ。あまりに肌が荒れていると、本来薬となるはずのものでも、表面に付着するだけで痛かったりするのである。それに加えてここまで信じるものに尽く期待を裏切られた経験が、保湿を避けるという選択を取らせるのだ。

アゼライン酸も試してみた。保険外と言いつつ通販で2000円くらいで買えるのだが、これは拷問みたいに痛かったので数日で音を上げてしまった。後で知って驚いたのが、世の中には肌に何の問題もないにも関わらず、美しさを追い求める気持ちだけでこんなものを肌に塗っている女性たちがいるらしい。根性ありすぎだろ。

そんな感じで四苦八苦しながらもyoutubeで酒さに関する動画を見まくって、この病気が細菌のバランスが崩れることで引き起こされるものであること、やっぱり保湿は必要なことを知る。

そうして散々悩んだ末のある日、私はそこまでに得た情報を整理してみた。

  • 私の悩ませている主な症状は酒さである可能性が高い
    • 散歩に行った後、
      特に日に当たる場所(頬とか)のピリピリ感が強くなる気がする
    • ロゼックスゲル、アズノール、ヘパリン類似物質は多少効果があった
      • 菌による炎症が起きている?
      • ヘパリン類似物質については
        保湿と血行促進効果が相殺している?
        • ということは保湿自体にはやはり良い効果がある
  • ただ、痒みは家の外に行くと軽くなる気がする
    • そもそも、酒さの症状で肌がピリピリするというのはよく聞くが
      痒みというのはあまり聞かない
    • 自分はアレルギー持ちである
  • パラベン、香料が含まれる化粧水を使用後に痒みが改善したためしがない

つまり、今の自分の肌は複数の問題がごっちゃごちゃに絡み合った結果、荒れに荒れまくっている状態なのではないか?

そして、素人考えで以下の作戦を立ててみた。

  • パラベン香料フリーかつ
    殺菌あるいは抗炎症作用を持つスキンケアを使用してみる
    • 敏感肌用のニキビケア用品が該当?
  • 上記スキンケアを行った上で
    数日連続で外出しない日、する日で結果が変わるか試す
  • 家にある疑わしいアレルギー源に対するアレルギー検査を受ける

これを実行してみたところ、クリーンヒット。

上記のスキンケアを試ししつつ家に籠ってみると、肌の状態は日に日に落ち着き、なんとあれほど酷かった赤みも徐々に消えていくではないか。反対に外に毎日出かけてみると、日差しが直撃したところが見事に赤く腫れる。しかし、それも毎日同じスキンケアをしっかり続けていくと、3日経ったあたりで症状が改善したのである。

この時点で私の悩みは8割解決したも同然だった。

またアレルギー検査についても、ハウスダストに加えて我が家のペットにもアレルギーがあることが発覚。外出中に痒みが弱まるのはそういうことだったのだ。病院からもらった痒み止めの飲み薬(アレジオンとかアレグラとかそいういう系統のやつ)を飲んだところ、顔が真っ赤になって痒くなる、という症状はほとんど完封できた。

といういうわけで、約1年にも及ぶ私と酒さとの戦いは終わりを告げたのである。

最後に

とにかく情報不足すぎてしんどかったので、同じような人の助けになりたくてブログを書いた。

また冒頭で紹介した私なりの対処だが、下地&パウダーで肌を保護するのは男性でも全然できることだと思う。BBやファンデーションを使わなければ、化粧してます感は全然出ない。お勧めである。

なお、先述のyoutubeの動画としてはこの辺↓を見ていた。こういう風に情報発信してくれる人たちは、当時の私に遠くの明かりのような安心感を与えてくれたので感謝している。

www.youtube.com

www.youtube.com

皮膚疾患はそれで死んだりするわけじゃないが、人目につくし、自分の視界にも頻繁に入るので、とにかく気持ちが落ち込む。

酒さについてももっと研究が進んで、いずれ再発しなくなるところまで持っていけるような薬ができたらいいなと思う。頭のいい人たち、何卒よろしくお願いいたします。

スミス・ティーメーカーのお茶が好きなので攻略記事を書く(勝手に)

久々にはてなブログを開いた。張り切って開設したはいいけど、結局長文を書くのが面倒になって放置していたのだ。

そんなズボラがなんで急にブログをまた書こうかと思ったのかというと、標題にある私の大好きなお茶屋さん「スミス・ティーメーカー(Steven Smith Teamaker)」について、唐突に世に広めたくなったからである。

そういうわけだから、ここからは以下のセクションに分けて、スミスさんのお茶とそれを快適に楽しむ攻略法を記載する。なお標題にもある通り、これはオタクが勝手にやっている推しのプレゼンである。こんな弱小ブログに大した影響力はないかと思うが、これを読んでくれた方がスミスさんのお茶を買ってくれても私には一円も入らないので安心されたし。

目次

そもそも「スミス・ティーメーカー」ってなんぞや

「スミス・ティーメーカー」はそのまま、スミスさんが創業したお茶屋さんである。独自に調合した茶葉を売っており、これをお湯につけるとお茶が出る。

スミスさんって誰?ということについては、下記公式HPに記載がある。なんか昔はスタバで紅茶の監修とかしていた人らしい。私はスタバでは抹茶クリームフラペチーノしか頼まないので、あまりその辺は詳しくないのだが…。

smithtea.jp

ここで売られているお茶のカテゴリは大きく分けて3種類。紅茶(黒い箱)、緑茶(緑の箱)、ハーブティー(黄色の箱)、季節限定フレーバー(ベースとなるお茶の種類に関わらず箱はカラフル)である。それぞれのカテゴリの中に、更に異なる個性を持つ多様なフレーバーが存在する。

スミスさんのお茶の何がそんなにいいのか

ここで個人的なスミスさんのお茶の推しポイントを解説する。それはずばり、

香料不使用

であること。

…おいおい、何だこいつ。こんなだらしない文章を書いといてちゃっかり意識高い系なのかよ、と思われた方は待ってほしい。私の意識は全然高くない。オーガニック主義者でもない。味の素を料理に普通に使うし。

私が香料不使用である点を評価しているのは、お茶においてはその方が断然美味いからの一言に尽きる。

デパートに行けば、ちょっと良いお茶屋さんを見つけるのは容易い。だが、3000円くらいの値段で売っているお茶の原材料を見ると、意外と香料入りだったりする。香りの部分を香料だけに頼っているお茶を3000円払って買うのは、個人的にはちょっと割高なのではないかと思っている。それなら、近所のスーパーで600円くらいで売ってるやつで全然十分なんじゃなかろうか。

なんでかというと、香料は香りが単調なのである。例えるなら、絵の具セットに入っている原色そのままというイメージが近い。

現代アートはともかく、大抵の人間が知識なしで美しいと思える絵画は、どれも繊細で複雑な色遣いをしているものではないだろうか。それはお茶も同じである。自然の食材は、香料より繊細で奥行きのある香りを表現できる。香料がx,yの2軸なら、自然の食材の香りはx,y,zの3軸である。また香料が直線なら、自然の食材の香りは曲線である。

私はお茶を味わうという行為は、普通に舌で味を楽しむことと、鼻で香りを楽しむことの二つで構成されたものだと考えている。全体の半分を占める要素で高いスコアを出せるなら、出した方がいいという主張だ。

3D格闘ゲームの先駆けであるバーチャファイターが初めて世に登場した時、世の中のゲーマーの多くは衝撃を受けたと先達のゲームオタクたちから話を聞いているが、私がスミスさんのお茶を初めて飲んだ時の感想はきっとこれに近いのではないかと思う。自分の中のお茶という概念に対してあった常識の蓋が外れて、お茶というのは色んな表現ができるものなんだなぁと驚き感心したのである。

勿論、複雑になるということは、方向性をまとめるのが難しくなるということでもある。そこを上手くまとめる手腕こそ、私がスミスさんに信頼を置いている点だ。

あと、ここのお茶はティーバックの材料に金属を使っていない。別に金属が嫌いなわけじゃないが、ホッチキスが見えると野暮ったい印象になるので、そういうところも個人的には好きだ。

初心者へのススメ

私が一番書きたかったのは香りの下りとこの部分なのだが、スミスさんのお茶の風味は結構ピーキーである。ゆえに自分の好みにドンピシャなものに巡り合えれば最高なのだが、はまらないフレーバーを箱買いしてしまうと、高いお金を払って飲みづらいお茶を大量に消費する羽目になり、後悔することになりかねない。

そこで、これからスミス・ティーメーカーのお茶を買ってみたい方は、まずは以下の方法で自分好みのフレーバーを探すことをお勧めする。

方法その① 既成のお試しセットを買う(オンラインショップ)

オンラインショップでは、人気のフレーバーを詰め合わせたサンプラーセットが販売されている。サンプラーは少量で安く、バラエティはもう少し数量と値段が大きい。紅茶や緑茶というカテゴリの中でも、フレーバーによって結構風味が違うものだ。その辺含めて試してみると面白いと思う。

SMITH サンプラーsmithtea.jp

スミス バラエティsmithtea.jp

方法その② 俺だけの最強お試しセットを作って買う(店舗)

スミスさんは渋谷駅に直結している渋谷スクランブルスクエアという駅ビル内に、店舗を出している。ここでは自分が飲みたいフレーバーを選んで作れる、俺だけの最強お試しセット(実際はもっとちゃんとした名前)を購入できる。

個人的にスミスさんのお茶の魅力を高めていると思う要素の一つに、フレーバーの命名センスが素敵という点がある。そういう観点から飲みたいフレーバーを選んで、自分だけのデッキを作っても楽しい。

また店舗内には各フレーバーの香りを嗅げるコーナーもあるので、気になる香りのお茶を選んでもよし。きつい香りのお茶でも実際に口にしてみると案外飲みやすかったりすることもあるので、香りの印象と実際の味を比べてみるのも良いだろう。

smithtea.jp

方法その③ カフェで実際に飲んでみる(店舗)

上記の店舗にはオシャレなカフェが併設されている。1杯700円前後と少しお高めではあるが、各フレーバーごとに推奨する淹れ方で淹れてもらったお茶を飲むことができる。

何故か公式側は頑なにお茶の種類ごとの値段以外の情報をネット上に出し渋っているが、実際には、紅茶や緑茶といった大枠の中から、かなり色々なフレーバーを1杯から指定して飲むことができる。具体的なメニュー表は下記の食べログに画像を上げて下さっている方がいるので、そちらを参考にされたし。

特に、渋谷店限定の「トウキョウ トワイライト」は脳裏に渋谷の街明かりがホワホワ浮かぶような、飲みやすく上品にまとまった味わいの緑茶だ。あまりクセがなく飲みやすい部類に入ると思うので、機会があったら飲んでみてほしい。

なお、カフェではお茶と一緒にクソデカいクッキーを注文することもできる。美味しかったが、お茶の味が華やかなので、無理に注文しなくても十分楽しめる印象だった。

・食べログ(メニューを見るならここの画像欄を漁るのが一番見やすい)

tabelog.com

・店舗公式サイト(何故か頑なに具体的なメニューを載せないので、これだけでは何が飲めるのかさっぱり不明)

smithtea.jp

個人的にオススメのフレーバー紹介

最後に私のお気に入りのフレーバーを紹介する。

スーズ セイヤーsmithtea.jp

スース―系の中でも飲みやすいハーブティー。ノンカフェインなので寝る前に飲んでも安心だ。黒コショウとかが入っているので、刺激的な味が苦手な人はダメかも。

美味しい淹れ方は、沸騰したお湯に5分つけるとのこと(下画像より)。

最後に

本当に唐突にお気に入りのお茶屋さんを紹介するだけの記事を書いてしまった。スミスさんのお茶はモノはいいのだから、先述のカフェのメニューとかの見せ方の部分を改善してぜひとも国内に広まってほしいと思っている。

ホラー小説『骨灰』がガチ面白かったので感想を書く

こんにちは。

ここ数日、めちゃくちゃ良作との出会いがあったので、久々に感想記事をば。

沖方丁さんの「骨灰」です。

www.kadokawa.co.jp

本作を読もうと思ったきっかけは、Twitter(X)で朝宮運河さん(@Unga_Asamiya)が開催されている #ベストホラー2023 の国内ホラー小説ランキングに2位にランクインしているのを見たこと。

暇つぶしに読んでみることにしたのですが、いざ読み始めたらまぁ面白くて暇になるまで待てないという。駆け抜けるように読んでしまいました。

素晴らしい出会いを下さった朝宮運河さん(@Unga_Asamiya)はじめとするホラー愛好家の皆様には感謝です。

ちなみに、読了直後の私のつぶやきがこちら。

当時はネタバレを避けたくて、とにかく詳細をぼかした言い回しにしたのですが、こうしてみると情報量が少なくてどこが面白いんだかよくわからないですね…。

というわけでこっち(ブログ)では、あらすじを軽く紹介したのち、ネタバレありでがっつり感想を書いていきたいと思います。

『骨灰』あらすじ

大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。

*1

感想(ネタバレ注意!)

・最初からクライマックス!!

さっきのあらすじを読んでいただいたらわかると思いますが、しょっぱなから謎の祭祀場、鎖につながれた男などなど、普通のホラー小説ならここが山場でも全然おかしくない展開のラッシュ。

最初から「え!?この後どうなるの!?」という気持ちにさせてくれる。そんで序盤だけの勢いで終わらず、その後も更に怖くなっていくんだからすごい。

脚本が破綻しないように山場を連続させるのってめちゃめちゃ難しいですよね。これで初ホラーってマジ?

・父の愛

当たり前ですが、祭祀場に鎖でつながれていたおじさんは、決して素人が解放していい人物ではありませんでした。

主人公・光弘が調査を進めると、彼が原義一さんという認知症患者であること、彼がいた祭祀場の"穴"は「骨灰(こっぱい)」と呼ばれる東京全土の焼死者たちの怨念が困った場所であり、原さんはそれを抑えるための水神の御饌使(みけし、生贄と違って死なずに済む可能性もある)として穴の中にいたことが明らかになります。

鎖でつながれていたのも、原さんは認知症を患っていることから、役目を忘れて逃げ出さないようにと自ら儀式の担当者に頼んだことだったのでした。

原さんを解放してしまった光弘は"穴"から解き放たれた骨灰に目を付けられます。暖かな家庭・念願のマイホーム・やりがいのある仕事…と幸せ一色だった当初から一転。骨灰たちに家の中に侵入され、周囲の人々に対して攻撃的になるだけでなく、仕事と称して"穴"に生贄を捧げることを第一にするようになり、どんどん孤立してしまいます。

優しかった光弘が道を誤っていく様子は、見ていてかなりしんどかったです。

そしてとうとう14人もの人間を"穴"に捧げ、もう後戻りできないところまで堕ちてしまったと思われた──そんな光弘を救ったのは、死んだ父の墓石とハンカチ!

それらに触れた瞬間、光弘を操っていた偽父(演:骨灰)は霧散し、焼死した亡者どものパーティー会場と化していた光弘のマイホームも、完全ではありませんが秩序を取り戻します。

読んだ時はこのシーン、ホッとすると同時に「ちょ、パパ強すぎん?笑」と思ってしまいました。

いや、ちがうんですよ。一故人が東京全土の焼死者の塊に勝つのがそう簡単なわけないじゃないですか。パパが魂をかけて守ってくれたから、光弘はこんな厄介な敵を退けることができたのです。

ちなみに、実は光弘パパもかつて骨灰に祟られた一人であり、そのせいで家族に対して高圧的になった時期があったことから、光弘には複雑な感情を抱かれていました。最終的には家が全焼し(多分骨灰の祟りによる出火)、水辺に新居を構えることで元の人格に戻ることができたそう。

そんな安息の地の墓を離れ、因縁の地にある貯水槽を新たな墓標としてようやく息子を守れたということは、それだけ骨灰が強い力を持つ存在であるということと、それに劣らないくらい父の息子を思う気持ちが強かったということだと思います。

・そしてラストバトルへ

さて、話を戻して、お父さんの助けでようやく正気を取り戻した光弘。

冷静になったことで、この事件がただただ怪異の仕業というわけではなく、背後に玉井工務店(注:祭祀場と儀式を管理していた、東京開発の影で暗躍するオカルト組織)の荒木の存在があることに勘づきます。

全部オカルトで片付けず、霊的パワーだけではどうにもできない、悪意を持った生きた人間がいるという、サスペンス要素もあるのが大変緊迫感があっていいですね。

しかし黒幕の存在に気付くも時すでに遅し、なんと娘の咲恵ちゃんが荒木に攫われてしまったのです!

光弘は、過去に自身と同じく祟られた経験があり今回の工事の現場責任者である菅原所長、そしてついに原義一さんとも合流し、みんなでこの祟りを終わらせるべく、荒木の元に向かいます。

途中、菅原所長が脱落しましたが、光弘パパと菅原所長の弟さんが守ってくれたのか、無事一命はとりとめます。一方、光弘は原さんを連れて"穴"へ。

すっかり正気を失った荒木と格闘になり、ひどい痛手を負いますが、父の「頑張れ」という声に奮わされ、僅かな力を振り絞ってなんとか立ち上がります。ボロボロになっていた光弘でしたが、原さんの加勢もあり、咲恵ちゃんも無事意識を取り戻します。

ここの格闘シーンも緊迫感があって非常に読んでいてワクワクしました。原さんの「なんで邪魔するんだよォ!かあちゃんを施設に入れなきゃいけないのによォ!」という叫がかっこよくも切ない。

・結末と代償

乱闘の結果、荒木から無事咲恵ちゃんを奪還した光弘。原さんは咲恵ちゃんの無事を見届けると穴の中に自ら戻っていきましたが、その瞳には覚悟が宿っているように見えました。

やっと事態が落ち着いて安堵する一方で、もう少し早ければ…!と思わずにはいられません。何故なら前述の通り、既に光弘は14人のホームレスを穴に捧げてしまった後であり、彼らは二度と戻らないのです。

光弘は逮捕されて罪を償ってエンディングかな?と思いきや、なんと玉井工務店が警察に手をまわしておりその件は無罪放免。玉井工務店の荒木にぼったくられたお守り代等も全額返金されることになりました。

う~ん、確かに光弘もわざとやったわけじゃないけど、やっぱり罪のない人々の命をたくさん奪ったのは事実だし、ずいぶん都合がいい終わり方なんだな…と、わずかなモヤモヤを残したまま読み進めます。

その後、光弘は玉井工務店の社長に連れられて、"穴"を封印する儀式に立ち会うことに。

現場に到着すると、穴の周囲には土が盛られ、そして底には原さんと荒木が。光弘がどういうことだと思った矢先、ついに儀式が始まり、ようやく彼は自分がやったことの重さを知ることになります。

原さんと荒木は穴の中で生きたまま土を被せられ、更にその上には追い打ちのようにコンクリートパイルが埋め込まれました。光弘は彼らが人柱となるのをただ見届けるしかありません。そして、その秘密を生涯一人で抱え込むことになりました。

私の印象なのですが、光弘は原さんを連れ戻して儀式を再開すれば、全てが元通りになると、なんとなく考えていたんじゃないでしょうか。

以前玉井工務店の社長から説明してもらった通り、原さんが穴の中で過ごした後、人形(生贄の代用品)と数日間共に寝起きして、最終的には人形だけで結界を維持できるようになるはずだと。

ただ、それは全てが順調にいった場合の話で、物語中盤で光弘が荒木からお守りを買うときに「これ以上"穴"と縁を持つと、御饌使の身代わりとして、穴の中に何日もいる以上のことをしなければならない(要約)」というようなセリフがありましたが、これは荒木の嘘などではなく本当のことだったのではないかと私は思っています。

光弘が儀式を中断させたことで、骨灰と原さん・荒木の縁がどうにもできないほど強まり、また骨灰自体の力も人形などでは抑えきれないほどのものになってしまったのではないでしょうか。

本編開始前から祟られていた荒木はともかく、原さんについては光弘が儀式を邪魔しなければ、今回の仕事でも指定の日数を終えたら、報酬をもらって愛する奥さんのもとに帰れたはずです。

光弘は原さんの奥さんがどんな気持ちで彼を待っているか知っていますが、儀式を見守るしかありません。だってこうなったのは自分のせいだし、儀式をやめたら自身の家族だけじゃなく、もっと大勢が死ぬことになるからです。

ハッピーエンドかと思いきや、やはりそこはホラー小説らしく、むごい結末で締めくくられましたね。

・埋めたもの

なんやかんやありましたが、ついにビルも完成!

光弘と家族は平穏を取り戻し、お腹の中の赤ちゃんも生まれるどころか喋れるようになっている!

第二子の名前は幸多郎くん。いわずもがな、光弘パパ・幸介の名前からとってますね。最初は父親に対してネガティブなイメージを持っていた光弘ですが、骨灰に祟られたことをきっかけに自分が父に尊敬と愛情を抱いていたこと、そして父も自分を愛してくれていたことに気づいたのでしょう。

そして、視界の端に荒木が見える。今のところは害はないけど、目を合わせるとだんだん近づいてきてしまうらしい。怖すぎる。なので光弘もすぐ視線を逸らしてたけど、チリツモで最後にはめちゃくちゃ近くに来そうな気がするのは私だけ?渋谷に行かなきゃ出現しないのであれば、なんとかなる…かなぁ?でも毎日通勤しないといけないもんね…。

一方で自分や咲恵を守ってくれた父と原さんは、交差点から光弘をじっと見つめた後、人ごみに消えていきました。

荒木は最後正気を取り戻していたように見えたけど、あの二人と別で出現するということは、やはり完全には戻れなかったんだろうか…。話を聞く限り相当前から祟られていて、実際かなり精神を侵食されていたからなぁ。先述の通り光弘はさっと目をそらしているので、どんな表情でこちらを見ているのかわからないのも不穏ポイント。

ていうか、パパと原さんが地上の交差点にいるのに、荒木だけ同じフロアって…なんか近くない?大丈夫だよね?執念で追ってきてるとかないよね?

今後、光弘が玉井工務店の社長の教え通りこの事実を一生誰にも漏らさず生きていければ、お父さんと原さんが見守ってくれている限り、──そしてあの結界を壊す誰かがまた現れない限り、きっと光弘や家族が災厄に見舞われることはないでしょう。

全体的にきれいにまとまりつつ、それでも若干の不穏さと、希望を残して終わる、というのが良い塩梅で素晴らしい。

「知ってるか?おれたちみんな、死者の上で生活しているんだ。」

帯にもあるこのセリフ、読了前は自分が立っている場所が実は事故物件だったことに気付いてしまったような居心地悪さを覚えますが、読了後は骨灰やそれを鎮めるために犠牲となった原さんや荒木、そんなことは知らずに彼らの上で生きている人々(かつての自分のように)への言葉だとわかります。

その他、細かい小ネタと考察

・因果が続くとしたら

無事骨灰は封印されましたものの、「因果が続く場合身内に行く」という説明と、父から息子へ因果が引き継がれていること、そしてご丁寧に祟られ実績のある光弘パパの字を貰っていることを考えると、万が一この因果が引き継がれるとしたら恐らく幸多郎くんに行く気がするので、どうにかして彼には土地開発と全く縁のない会社に就職してほしいですね。なんだろう、NASAとか…?

ただ、人間が地に足をつけないと生きていけない以上、どんな生き方をしても土地に全く無縁の生き方というのはできないよなぁ。

・竹中の罵倒

妊娠中の妻・美世子の検査に立ち会うため、上司の竹中に早退してもよいか相談する際「お前が産むわけじゃねぇだろうが!」みたいな感じで罵倒されて光弘が失望するシーンがありますが、それまで電話越しの竹中のセリフは《》で囲われていたのに対し、その罵倒の部分だけは普通の「」であることに気づいたのは私だけではないはず。あれは横にいる偽父(骨灰)が竹中の声を真似て叫んだという解釈でOKかと思います。

・水と火

今作では一貫して、水は安全なもの、火は危険で有害なものとして登場します。パパの墓石のお祓い方法がもしお焚き上げとかだったら、最終決戦時にあの穴の上にある貯水槽にはたどり着けなかったですよね。

ただ日本の神様ってのは人類の加護者ではないと思うので、今回はたまたま敵対勢力の対抗勢力だったから水が助けてくれただけ、という風に私は解釈しています。その証拠に、儀式がうまくいかないと水神様が御饌使を招いてしまうことがあるという話もありました。招かれた御饌使は何処に行ってしまうのか?というのは言わずもがな。

良い神様!と雑に括るのではなく、その辺をちゃんと伝わるように書いてるところに好感が持てます。

・ホームレス

今作にはよくホームレスが登場します。彼らを憐れみつつも内心ではどこか嫌悪感を持ち(骨灰に人格を歪められていたとはいえ)、自分が同じように転落することを恐れながら、父の言いなりになって穴に生贄を捧げ続ける光弘と、奥さんや世の中のために躊躇いなく自分を犠牲にできる原さんの対比は印象的です。

原さんの高潔さに心を動かされる一方で、世間がもう少し彼らに目を向けていれば原さんや14人のホームレスたちは穴の中に埋もれずに済んだかもしれないな…と思わずにはいられません。

・荒木の言動

骨灰に憑かれていた荒木ですが、光弘に死んだ身内の遺品を着けるように勧めたりしていましたよね。

光弘もあくまでIR部の業務の一環として生贄探しを行っていたので、荒木も本人的には真面目に神職として振舞っていたつもりだったのでしょう。

また骨灰も現在の感情や現実に対する認識を歪めることはできても、既存の知識は歪められなかったものと思われます。

感想終わり

他にも光弘の自宅が本当にパワースポットだったりしないか?とか、いろいろ気になるところはあるのですが、とりあえずざっと気になったところやこの本の面白さを書き出せたので、一旦満足です!

また読み返して気付くことがあれば記事にしたいと思います。

沖方さんの他作品も色々読んでみたい。

ここまでお読みくださりありがとうございました!

*1:KADOKAWAオフィシャルサイトより引用

エッセイ『煙が目にしみる 火葬場が教えてくれたこと』感想

久々に本を読んだので、感想を書いていきます。

煙が目にしみる : 火葬場が教えてくれたこと | ケイトリン・ドーティ, 池田真紀子 |本 | 通販 | Amazon

読む前~読み始めの感想

まずこの本で目についたのは表紙。

赤色が印象的な、クラシックなデザイン。

かっけぇ…。

 

そして『煙が目にしみる』という、どこかハードボイルドさを感じさせる簡潔なタイトル。

かっけぇ…。

 

そして副題。

火葬場が舞台のエッセイ!?

読むしかない!!!!

 

こうして、私はこの本を手に取りました。

(この記事を書く途中で知りましたが、引用元は有名な歌のタイトルのようですね)

 

さて、今作の舞台である火葬場ですが、皆さんは訪れたことはありますでしょうか?

私はここ1年間で、愛兎と祖父の合計2名の葬儀の際、火葬場を訪れています。

特に、愛兎の葬儀は自分で手配を行ったのもあり、今でも鮮明に覚えています。

いくら心の準備をしてきたつもりでも、やはり愛する者との別れというのは動揺してしまうもので、私は今でも時折「当時の自分はちゃんと彼らを見送れたのだろうか」「私は彼らと最後に誠実に向き合えただろうか」と自問自答することがあります。

 

さて、今作の主人公にしてこの本の著書、ケイトリンはどうでしょうか。

彼女は治安の悪そうな地域に住み、露出狂にも動じないタフさを持つ、死に対して興味津々なサブカルガールです。

ちょっとギザな言い回しが多いし、火葬された頭蓋骨を壊すし(カリフォルニア州では火葬後の遺骨は最終的にパウダーにして遺族に返されるらしいので、途中で骨を壊しても大した問題にはならないのですが)、一見すると死に真摯に向き合っているようには見えません。

「私が火葬された人の親族ならキレてるかもしれないな…」などと読み初めは思っていました。

 

でも彼女の様子をよく見ると、そうした言動の影にはしっかり遺体に対する戸惑いや狼狽が隠れていることが伺えます。

確かに、自ら望んで火葬会社に就職した以上、小娘みたいに泣き喚くわけにもいかないし、だからと言ってその道何十年のプロと同じように開き直ることもできませんよね。

どうも、ケイトリンはその2つの境地の中間にいて、自分なりに遺体との向き合い方を模索してるようです。


…などと思いながら読み進めていると、ケイトリンの衝撃的な過去が判明します。

彼女は幼少期、ハロウィンの日に他所の女の子が転落死(実際の生死は不明だそうですが)する場面に居合わせたことがあったのです。

幼いケイトリンはそのショックで今で言う強迫性障害を発症し、自分や愛する家族の死に対して異様に怯えながら少女時代を過ごしました。

ケイトリンが死に関心を抱くのは、死に対する不安や恐怖の正体を見極めるためだったのです。

”死を隠す”現代アメリカの葬儀スタイル

嬉しいことに、本書ではそこそこの頻度で日本の文化が話題にあがります。

何故かというと、日本は遥か昔から火葬文化がある国だからです。

日本だけでなく中国やアフリカなど、歴史が長い国では風習という形で、死と向き合う方法が人々の間に共有されています。

一方、ケイトリンが暮らすアメリカは国としての歴史が浅く、火葬の歴史は更に浅いため、死との向き合い方に対して答えを示してくれる文化がありません。

なので、死をひたすら直視しないようにする、というのが現代アメリカ社会における死との向き合い方になっているそうです。

ケイトリンは様々な年齢・国籍・境遇の人を火葬し、また火葬場スタッフや遺族と交流する中で、こうした現状に疑問を持つようになります。

死を隠す行為の代表例としては、遺体を生きたままのように見せるエンバーミング技術、注文から納骨までインターネットで完結する火葬メニュー、エンターテイメント性のある墓地などが紹介されています。

ケイトリン曰く、どれも表面を取り繕って不安から視線を逸らすこと、そしてお金を稼ぐことに秀でているそうです。

自分はアメリカの文化にはそこまで詳しくないですが、洋ドラ(特にホラー)なんかを見てると、向こうは「常に笑顔で前を向いてないとダメ!」みたいな日本とは別ベクトルの同調圧力があるのかな~なんて思ったりしますね。

ケイトリンの成長譚でもある

それと、この本はアメリカの葬儀事情を知れるだけでなく、1人の若い女性のキャリアの話でもあります。

未経験の業界に入って、何を考えているのかわからないおじさん達にビクビクしながら、必死で仕事を覚えるうちに、段々おじさん達が本当は思慮深くプロ精神を持って仕事に取り組んでる人間だということが見えてくる。

自分の理想と業界の現状のギャップに悩んだりしながら、それでも正しいと思うこと、自分がなすべき事をなす為に、できることを必死でやる。

思わず、前職での自分の体験と重ねながら読んでしまいました(私はケイトリンほど上手くやれてません)。

入ったばかりの職場で先輩が恐く見えるのはどこの国でもあるあるなんですかね…。

思い通りにいかない場面や納得できない状況にあっても、自分にできることをやり抜くケイトリンの姿勢は素晴らしいと思います。

最後に

繰り返しになりますが、この本はケイトリンのエッセイです。

つまり、実際にあった死の数々を目の当たりにした結果、ケイトリンが至った悟りを言語化したものとも言えます。

そんな重みのある内容である本書の内容を、私みたいな若輩者が「ふむふむ、よくわかります」なんて抜かすのは、どう考えても烏滸がましいでしょう。

ケイトリンの考えには、何度も死に立ち会って自分の心で何かを感じたり、人生経験を積まないと理解できないであろう部分が多いです。

ただ、それでも私は、彼女が死との向き合い方について、真摯に、誠実に、考え続けていることは理解できました。

 

多分、私もこれから身近な人の死を何度も体験する中で、ケイトリンに共感したり、異を唱えたりしたくなるでしょう。

例を挙げると、ケイトリンは愛する人が収まった火葬炉のスイッチを押すことが前向きな気持ちに繋がると綴っていますが、私はそれを実行した結果、後悔と悲しみを感じました。

ケイトリンに言わせれば、それは私が現代社会特有の死の隠蔽の影響下にあり、また私自身もその片棒を担いでいることになるのでしょう。

火葬炉のスイッチを押す時の悲しみも、死の受容プロセスの一環として、逃げずに受け止めるべきものである、というのが彼女の主張だと思います。

それが正しいことなのかは、人生経験の乏しい今の私に判断することはできません。

本書の中でも、ケイトリンの他に、自分なりの死との向き合い方を示したアメリカの先人たちが何人か紹介されていますが、皆主張は様々です。

でも、そうした主張への賛否を考えることが、死に対して真摯に向き合う第一歩になると思うのです。

もしこの本がそのきっかけになったのであれば、ケイトリンが我々に訴えようとしたメッセージは、充分伝わったと言えるのではないでしょうか。

 

以上、『煙が目にしみる 火葬場が教えてくれたこと』の感想でした。
ここまで読んでくださりありがとうございました。

映画『君たちはどう生きるか』感想

こんにちは。

今、色んな意味で話題の映画『君たちはどう生きるか』を観に行ってきたので、感想を語ろうと思います。

私はジブリや今作の熱心なファンではありませんので、万が一あなたが誤った考察や事実と異なる表記を発見した時は「わかってねぇなこいつ」と軽く流してもらえれば幸いです。

前もって聞いてた評判

私より先にこの映画を観てきた家族が「すごくいい、意味不明だがそれでもいい」などと、メチャクチャな感想を言っていたので、つい興味を惹かれてしまいました。

先程この映画のことを「色んな意味で話題」と説明しましたが、公開まで一切宣伝を行わないかったこと、何より観客のレビューが⭐︎1か⭐︎5の2極化していることが特に注目を浴びているポイントかと思います。

ざっくり観た感想

というわけで実際に観に行ってみましたが、私の中での本作への評価を⭐︎5つで表現するなら、⭐︎2くらいかなぁ〜という感じでした。

評価が低めな理由は、大きく分けて以下2点です。

①オリジナル作品のタイトルを、バズった別作品から取るな
②この映画で1番表現したかったことがどれかわからない

①オリジナル作品のタイトルを、バズった別作品から取るな

まず、私が勘違いしていた点として、大バズした書籍『君たちはどう生きるか』のアニメ化作品ではありません。

この映画は宮崎駿監督のオリジナル作品です。

コペルくんも出てきませんし、内容もめちゃくちゃファンタジーです。

どうして宮崎駿監督は全くる異なる内容の他作品のタイトルを、この映画のタイトルとして引用したのでしょう?

私は、この作品が宮崎駿監督が書籍『君たちはどう生きるか』を読んで、感じたことを自分なりに表現したものだからではないか思っています。

書籍『君たちはどう生きるか』については、読み手に生き方について問いかけ、考えさせる姿勢が印象的な作品です。

その辺に売ってるビジネス本のように、「こうすれば成功する」「絶対に善い人になれる」というメゾットを記した本ではありません。

宮崎駿監督はこの作品を読んで、自分にとって生きるとはどういうことか考え、その果てに出た結論を、監督が1番得意とする映像作品として著したくなったのではないでしょうか。

じゃあ宮崎駿監督にとって生きるって何でしょう?

私は悪意を孕む世界の一部として、悪意と向き合い、人とぶつかり傷つき和解しながら前に進むことではないかと思います。

悪意ってなんぞや

本作のストーリーを振り返ってみましょう。

今作の主人公・眞人は火事で母親を失い、未だにその死から立ち直れていません。

しかし父親は母親の妹である夏子叔母さんと再婚し、さっさと子供まで作っています。

その義母も、眞人に初めて会うや否や、母親ヅラで馴れ馴れしく話しかけて来ます。

母の実家のお屋敷にいる使用人たちは、老人のくせに子供のような耳障りな声で喋り、勝手に鞄を開けて土産を漁るなど、下品ともとれる行動をします。

 

眞人を取り囲む人々は、眞人の孤独や傷を理解してはくれません。

しかし、眞人が危険な目にあった時、彼らは全員自分のやり方で眞人を守るべく懸命に動いていました。

皆、気難しい眞人をなんとか元気付けて、寄り添いたくて、自分にできる精一杯をやっているのです。

 

眞人がそれを自覚する最大のきっかけになったのは、やはり継母である夏子叔母さんの言葉でしょう。

ある日突然行方不明になってしまった夏子叔母さん。

眞人は夏子叔母さんは父の大事な人だからと、半ば渋々とした気持ちで彼女を探しに行きます。

長い冒険を経て、ついに夏子叔母さんを見つけた眞人。

塔の中の世界で、石に守られながら赤ちゃんを産もうと産屋に横たわる彼女に、眞人は「夏子叔母さん、一緒に帰ろう」と呼びかけます。

しかし、そんな眞人を見た夏子叔母さんは、普段穏やかな態度とは打って変わって、興奮した様子で叫びます。

「あんたなんか大っ嫌い!」

…そう、新しい親子関係に戸惑っていたのは眞人だけではありません。

夏子叔母さんも、連れ子である眞人との向き合い方について、ずっと葛藤していたのでした。

どんな場面でも決して目線を合わせず、最低限の言葉しか交わそうとしない眞人の態度からは、自分が彼に拒絶されているという事実が嫌というほど伝わって来ます。

普通なら自分を嫌っている人となんて仲良くしたくありませんよね。

いっそ眞人を無視したり、お互い正直に憎み合ったりする方が、楽かもしれません。

でも夏子叔母さんはそうしませんでした。

自分の中にある「悪意」を乗り越えて、大人として、母親として、夏子叔母さんはめげずに眞人に歩み寄ろうとしていたのです。

お腹にいる眞人の弟の話をしたり、眞人の母の話をしたのも、眞人に家族と認めてほしかったからだと思います。

しかしそんな努力も虚しく、眞人は決して夏子叔母さんの存在を認めません。

そんな現実が辛くなって、夏子叔母さんは自分を傷つける者がいない、塔の中に逃げ込んだのでしょう。

 

夏子叔母さんが自分と同じ苦しみを抱えていたこと、自分の苦しみは彼女の優しさに甘えた独りよがりだったことに気づいた眞人。

彼女に向かって手を差し伸べ、本心からこう言いました。

「母さん、一緒に帰ろう」

こうした出来事を経て、眞人は思い通りにならない現実を受け入れ、傷つけ合うことがあっても、今自分を大切にしてくれる人たちと生きていくことを決め、塔の中から元の世界に帰りました。

悪意を拒んだ大叔父さん

一方、眞人の母親の大叔父さんは、お屋敷の庭にある塔の中に不思議な世界を作り、その中に閉じこもっていました。

大叔父さんが作った世界は、まるで神話かおとぎ童話のようです。

大叔父さんはその世界の「殿様」として、頂点に君臨しています。

ピンチになっても、大叔父さんをはじめとした眞人の一族は、あの世界ではスーパーパワーを使えます。

悪者であるペリカンやインコが現れた時も、本気を出せばスーパーパワーでなんとかできるのです。

ただし、スーパーパワーを喰らった方は苦しんで死にますが…。

 

こう書くと、塔の中の世界は大叔父さんや眞人にとっては、現実世界より居心地の良い場所だと思いませんか?

 

眞人と大叔父さんは似た人物ながら、対照的に描かれていると思います。

2人とも、賢く、思慮深く、繊細。

しかし、眞人は悪意や傷つくことを受け入れて現実で生き続けることを選んだ一方で、悪意を避けて綺麗な世界に篭った大叔父さんは、最後には自分が持ち込んだインコに自分が作った世界ごと滅ぼされてしまいました。

この2人の対比を見ていると、宮崎駿監督が良しとした生き方は、やっぱり眞人の方なんじゃないかなーと私は思います。

私はどっちかというと大叔父さんタイプなので、そんな生き方してると滅びるとか言われるとちょっとムッとしちゃいますが。

おまけ:眞人の自傷の理由は?

眞人は映画のラストで、自ら石を頭に打ち付けてできた傷跡のことを「悪意によるもの」と言っていました。

つまり眞人は何かしら自分の利益のために、あの傷を負ったということです。

何がしたかったのか、作中で明確な描写はなかったと思いますが、恐らく眞人は仮病で構ってもらおうとするようなメンヘラタイプではないので、自分もしくは現状が嫌になって自傷したのかな?と私は思っています。

生を諦めることをエゴ(悪意)と解釈していいならですけどね…。

②この映画で1番表現したかったことがどれかわからない

先述の考えが正しければ、多分今作のテーマは「生き方」なのでしょう。

ただ、いかんせん塔の中の世界観が独特すぎて、もとより奥深い今作のテーマを、更に理解しづらくするノイズになってしまっている印象でした。

同じくジブリの『千と千尋の神隠し』もかなり不思議な世界が舞台ですが、あちらは世界観の描写と千の成長がしっかりリンクしており、ノイズになるどころか魅力になっていた記憶があります。

私の家族はこの辺をスルーして、映像表現や世界観を楽しめたようですが、私は理屈っぽいのでその辺が気になってしまいました。

墓の主とか、意思を持つ石とか、その辺の専門用語や解説に気を取られて、登場人物たちの心の変化に集中できないんですよね。

「生き方」なんてぶっちゃけ説教くさいテーマの映画をやるなら、ちゃんとどの要素に情報量を割くか考えたほうがいいんじゃないでしょうか。

まとめ

というわけで、長くなりましたが、映画『君たちはどう生きるか』の感想でした。

私にはちょっと合わなかったですが、映像表現は素晴らしいし、刺さる人には刺さる作品のようなので、気になるなら一度見に行ってはいかがでしょうか?

ここまでお読みくださり、ありがとうございました!